サラリーマンのあしあと

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【本の紹介】「ご冗談でしょう、ファインマンさん(上・下)」R.P.ファインマン(著)大貫昌子(訳)

ご冗談でしょう、ファインマンさん〈上〉 (岩波現代文庫)

ご冗談でしょう、ファインマンさん〈上〉 (岩波現代文庫)

ご冗談でしょう、ファインマンさん〈下〉 (岩波現代文庫)

ご冗談でしょう、ファインマンさん〈下〉 (岩波現代文庫)


著者はノーベル賞を受賞したR.P.ファインマンです。
本書は著者の日常でおこったエピソードをユーモラスに綴ったエッセイです。
どちらかというと知的なユーモラスさに満ちた内容です。



以前に書籍を紹介させて頂いたノーベル賞受賞者のキャリー・マリス氏同様に、本書の著者も好奇心旺盛でいろいろなことに興味を持ちやりたいことを実践することで、面白可笑しい人生を歩んでいます。



文庫版訳者あとがきに書かれているのですが、著者には二つの信条があります。


一つめは、

【とにかく何かにあっと驚き、なぜだろう?と考える心を失わないこと。そしていいかげんな答えでは満足せず、納得がいくまで追求する。わからなければわからないと、正直に認めること。】


二つめは、

【人がどう思おうと、ちっともかまわない】



この二つの信条を貫いたことが、ユーモラスな人生を送ることのできた一番の理由ではないでしょうか。



キャリー・マリスは4度結婚してましたが、著者も一度の死別を含め3度結婚しています。
ほんとに自由ですね。


それでは本書で気になったことや考えさせられたことについて紹介させていただきます。



著者は第二次世界対戦で広島と長崎に投下された原子爆弾の開発に携わっています。

当時はヒトラーより先に開発に成功しないといけない、開発に成功すれば成功したという事実により戦争が終わると考えていたようです。


結果的には多くの犠牲者がでています。


著者は、開発に成功した当時についてふりかえっています。


【そのとき、僕をはじめみんなの心は、自分たちが良い目的をもってこの仕事を始め、力を合わせて無我夢中で働いてきた、そしてそれがついに完成したのだ、という喜びでいっぱいだった。そしてその瞬間、考えることを忘れていたのだ。つまり考えるという機能がまったく停止してしまったのだ。】



原子爆弾が戦争の武器としてどんなに脅威的なものか、実際に使用されたらどうなるかを客観的に判断することが出来なかったのでしょうか。
とても頭の良い人たちが、考えることを忘れるくらい戦争は当時者を狂わせるのです。


その後、著者は原子爆弾による被害をどのように感じたのか。





著者はある時期、物理の仕事が楽しくなくなります。
そして「なぜ、昔は楽しめたのだろう」と自問します。

そのこたえは、

【そうだ、以前は僕は物理で遊んだのだった。~ただ僕が面白く遊べるかどうかが決めてだったのだ。】

です。

また、

【後でノーベル賞をもらうもとになったダイアグラムも何もかも、僕がぐらぐらする皿を見て遊び半分にやりはじめた計算がそもそもの発端だったのである。】

ともあります。


何かで大きな成果を出そうとするなら、楽しみながらできることでないと無理なのでしょう。





著者は日本をとても気に入っており、一時は頻繁に来日しています。

本書で、初めて日本に訪れた際のエピソードを綴っています。


著者は西欧風のホテルに宿泊するのがいやでスタッフに無理を言って、高級旅館に宿泊しています。
旅館の風呂でばったり湯川秀樹に出くわしています。
驚きですね。

著者は日本の旅館の慣習やサービスにとても感銘を受けています。


また、著者はある国際会議で日本大使と会話を交わしています。


著者は日本大使に質問します。

【「一体全体日本をこのような国に育てあげることができたのは、日本人のどういう特性によるものでしょうか」】


日本大使は、必ずしも正しいかどうかはわかりかねますが、という前置きの後に、


【「とにかく日本人は向上するには子供を自分以上に教育することしかない、そのためにはぜひとも百姓仕事から脱出せねばならんと信じている。だから子供たちが学校でよく勉強するよう、どんどん前進するよう励ます熱気が家庭の中にみなぎっている。」】


とこたえています。


戦後の日本の急速な成長の要因であることに間違いないでしょう。


現代の日本はどうでしょうか。

少なくとも僕は子供には自分以上になってもらいたいから、金はかかりますがそれなりに教育(勉強に限らず)には力を入れているつもりです。

周りを見ているとそれぞれの家庭で温度差はありますが、それなりに子供の教育には力を入れているようです。


話は少しずれますが、今の時代、子供の教育には金がかかります。
これは教育格差につながり、社会問題となっています。
このことについては非常に問題だとは思いますが、はっきり言ってどうしようもありません。
今後も教育格差は広がる傾向にあると思います。
だからこそ、現実を受け入れて親は必死にお金を稼がないといけないのです。




著者は、本書でとても面白いエピソードをたくさん綴っています。
人生を楽しむスペシャリストです。


本書はかしこまった人生を送っていることに疑問を感じている人が読むと肩の力が抜けると思います。
少し気が楽になるのではないでしょうか。

また、人生を楽しむヒントもたくさんあります。



本書は上・下巻で少しボリュームがありますが、比較的すらすら読めます。

なかなか良い本に出会えたなって感じです。






おしまい